「明るいカラー剤で染めたのに、黒染めした部分が上がらない」。サロンでこんな経験はありませんか。
髪を明るくするときは、地毛のメラニンを明るくしたいのか、以前のカラーで入った染料を取りたいのかを分けて考える必要があります。
この記事では、リフトと脱染の違いを整理したうえで、未処理毛と酸化染毛剤で暗く染めた毛束を比較します。
髪を明るくする前に、何を抜くのか?を考える
明るくする対象は、大きく分けて地毛のメラニンと、過去のカラーで髪に入った酸化染料です。どちらの暗さが問題なのかによって、選ぶ薬剤も結果の読み方も変わります。
地毛のメラニンを明るくする「リフト」
地毛の明度を上げるリフトには、ライトナーやブリーチなどを使います。通常のアルカリカラーにもリフト作用はありますが、必要な明度と髪の状態に応じて選びます。
アルカリによる負担を考えるときは、pHとアルカリ度だけでなく、髪がアルカリに触れる時間も見ます。狙った明るさに必要な処理を選び、製品の使用条件を守りながら、接触時間を必要以上に延ばさないことが大切です。pHだけで負担を比較できるわけではありません。
pHとアルカリ度がそれぞれ何を示すのかは、「アルカリ度とpHの違い」で詳しく解説しています。
黒染めで残った酸化染料を対象にする「脱染」
以前の酸化染毛剤による色が暗さや濁りの原因なら、地毛のメラニンをリフトする話とは分けて考えます。ジアミン系の染料を含む酸化染料など、髪に残った染料を取り除く目的で検討するのが脱染です。
ただし、「脱染剤」という名前だけで地毛への作用をゼロと決めつけることはできません。配合や製品によって作用が変わるため、使用条件と実際の毛束の変化を合わせて見ます。
ブリーチは脱色と脱染の両方に作用し得る
ブリーチは地毛のメラニンにも、カラーで入った染料にも作用し得ます。だから「暗い髪にはすべてブリーチ」と決めるのではなく、残留色素の有無と、必要な明度を先に確認します。
今回使うGEECHのリムーヴも、配合によって中性からアルカリ性まで調整でき、配合次第で弱めのブリーチとして使える薬剤です。実験では、実際に採用した配合を明示してから結果を読み取ります。
未処理毛と暗く染めた毛束、8本で何を比較する?
同じロットの未処理毛を二組に分けます。一組はそのまま、もう一組はミルボン オルディーブ b6-NB(グレーカラー)で暗く染めます。それぞれを「追加処理なし・リムーヴ(脱染剤)・ライトナー・ブリーチ」の四条件に分けます。
| 毛束の条件 | 追加処理なし | リムーヴ | ライトナー | ブリーチ |
|---|---|---|---|---|
| 未処理毛 | ① | ② | ③ | ④ |
| b6-NBで暗く染めた毛束 | ⑤ | ⑥ | ⑦ | ⑧ |
⑤の「追加処理なし」は、b6-NBで暗く染めるだけという意味合いです。未処理毛は①、暗く染めた毛束は⑤を基準に比較します。
白髪染めで暗く見える理由や、既染部に染料が重なる仕組みは、「白髪染めの仕組みとpH・アルカリ度」でも確認できます。
このあとの写真は、写真①・③が未処理毛の処理前・処理後、写真②・④が6レベルカラー毛の処理前・処理後です。写真に手書きされた①〜④は各写真の左からの順番で、6レベルカラー毛では記事中の毛束⑤〜⑧に対応します。
暗く染める条件:ミルボン オルディーブ b6-NB/6%オキシ=1:1。
脱染の比較:GEECH リムーヴ。今回の配合は PH8.5 アルカリ2に調整
ライトナー:タマリス フローム F/ブースター/6%オキシ=1:1。
ブリーチ:ミルボン アディクシー ハイブリーチ/6%オキシ=1:2。
各薬剤の配合や放置時間はそれぞれの製品の使用条件に従い、無理に同一にはしていません。
未処理毛では、薬剤ごとにどう変わる?
①の未処理毛を基準に、②リムーヴ、③ライトナー、④ブリーチを比較します。ここでは地毛のメラニンへの作用と、見えてきたアンダーを確認します。
①追加処理なしと②リムーヴを比較
今回、リムーヴの脱染作用を見せるため、pH8.5・アルカリ度2に調整しました。未処理毛には取り除く酸化染料がありません。それでも②は①より約1~2レベル明るく見えます。今回の配合では地毛のメラニンへのリフト作用も働き、未処理毛に対しては弱いブリーチに近い挙動を示したと考えられます。
①追加処理なしと③ライトナー・④ブリーチを比較
③ライトナーは②リムーヴとほぼ同じ明るさに見えます。ただし、仕上がりのレベルが近くても、髪への負担やダメージまで同じとは言えません。今回はダメージ量を測定していないため、この点は別の検証で取り上げます。④ブリーチは、今回の条件で1回処理した結果、見た目で約14レベルまで明るくなりました。
暗く染めた毛束では、薬剤ごとにどう変わる?
b6-NBで暗く染めた⑤を基準に、⑥リムーヴ、⑦ライトナー、⑧ブリーチを比較します。とくに⑥と⑧は、染料の残り方と髪の状態を写真で並べて見ます。
⑤追加処理なしと⑥リムーヴを比較
⑥は⑤より明らかに明るく、未処理毛にリムーヴを使った②にも近い明るさに見えます。今回の配合では、残留染料への脱染と地毛のメラニンへのリフトが同時に起きたと考えられます。ただし、白髪部分は白に戻らず、薄いブラウンが残っています。染料がすべて取り除かれたわけではありません。
⑤追加処理なしと⑦ライトナーを比較
⑦は⑤より気持ち明るく見える程度で、⑥ほどの変化はありません。未処理毛の③は明るくなっているため、ライトナーは地毛のメラニンをリフトしていても、今回の6レベルカラー毛では残留染料による暗さが残り、見た目の明るさにつながりにくかったと考えられます。
⑤追加処理なしと⑧ブリーチを比較
⑧は⑤より明るくなりましたが、想像していたよりも上がらず、見た目では約11レベルです。未処理毛をブリーチした④の約14レベルと比べると、約3レベル暗く見えます。残留染料が仕上がりの明るさに影響した可能性があります。ただし、この見た目の差から残留染料の量を数値化できるわけではありません。
⑥リムーヴと⑧ブリーチの違いは?
⑧ブリーチのほうが⑥リムーヴより明るくなりました。一方、⑥はpH8.5に抑えた条件でも、脱染と一定のリフトが見られます。リムーヴは配合を変えてpH10程度まで上げれば、脱染力やリフト力を高められる可能性があります。ただし今回はpH10条件も髪のダメージ量も検証していないため、ブリーチ1回分の明るさをより少ない負担で得られるかは、別の毛束比較が必要です。必要な明るさと髪への負担のバランスをどこで取るかが、薬剤選定のポイントになります。
実験結果をサロンワークの薬剤選定にどう使う?
毛束の結果を参考に、目の前のお客様の髪の履歴と状態を考えてみてください。明るさだけで薬剤を決めず、既染部にどの染料が残っているか、髪の強度がどの程度あるかを確認します。
新生部と暗く染めた既染部では、何を変える?
新生部では地毛のメラニンをどこまでリフトするかを考えます。一般的なカラー剤では、さらにそこに色素が入り、ややトーンダウンさせています。既染部では、過去の酸化染毛剤による色が、目標の明るさや色味を妨げていないかを見ます。同じ色番のカラー剤を根元から毛先まで重ねても、土台が異なれば結果はそろいません。
新生部と既染部でオキシの濃度や配合をどう考えるかは、「カラーオキシの使い分けとアルカリコントロール」で詳しく解説しています。
脱染後はなぜアンダーを確認してから色を入れる?
脱染後に現れた明るさと色味を見てから、仕上げの色を決めるためです。染料が抜けたように見えても、元の髪のメラニンや残留色素がどの程度残るかは、履歴と処理条件で変わります。
髪を明るくするカラーのよくある質問
黒染め毛に明るいカラー剤を重ねれば明るくなる?
明るい色番を選ぶだけで、希望の明るさになるとは限りません。過去の染料が残っている部分と、地毛の部分では反応が違います。まず履歴と現在の土台を確認します。
脱染剤は地毛をまったく明るくしない?
製品や配合によって異なります。今回使うリムーヴは配合次第でブリーチとしても使えるため、「脱染剤なら地毛には作用しない」と一律には言えません。今回の実験で使った配合と、未処理毛②の結果を合わせて確認します。
ライトナーとブリーチはどう使い分ける?
必要なリフト量、残留色素、髪の強度と製品の使用条件で選びます。過去の染料を取りたい場合は、ライトナーだけを選ぶ前に、脱染が必要かどうかも確認します。
毛束実験とお客様の髪で結果が違うのはなぜ?
実際の髪には染色回数や使用した薬剤、部位ごとのダメージなど、毛束より複雑な履歴があります。毛束の比較は薬剤の作用を考える手がかりとして使い、施術では履歴と状態に合わせて判断します。
まとめ|リフトと脱染を分けて明るさを設計する
地毛を明るくしたいならリフト、以前のカラーの染料を取りたいなら脱染という目的を先に整理します。ブリーチや、配合によって作用が変わる薬剤は、名前だけで働きを決めつけません。
今回の要点は次のとおりです。
- 地毛のメラニンを明るくするリフトと、以前のカラーの残留染料への脱染を分ける
- アルカリの負担はpH・アルカリ度とともに、髪に触れている時間も考える
- 未処理毛①と暗く染めた毛束⑤を、それぞれ比較の基準にする
- リムーヴは実験で採用した配合を明示して結果を読む


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